文化の垣根を超え、
人と人のつながりを生み出したウォールアート。

ブラジルスタイルの和食料理店の壁面に
ブラジルと香港の文化の融合を表現した作品があります。
たくさんの鮮やかな色で描かれた、エネルギーと喜びに満ちたブラジル人女性のアートです。
ピンク色の外観は日本の桜を連想させ、
宙を舞うイチョウの葉はメインアートワークと
レストランの入口をつなぐために描かれています。
フランス人アーティストのElsaさんは
「このアートを描き始めた時は、外国人が描いたウォールアートが
地元の方々に受け入れてもらえるか不安でしたが、
すぐに多くの人が作品に共感して話しかけてきてくれたり、
私が描いている間にウォールアートの前で
セルフィー写真を撮ったりして喜んでくれていることに気づきました。
アートは、文化の垣根を超えて人と人のつながりを生み出すことができると信じています。
だからこそ、街中にできるだけ多くの笑顔を描くことで、
自分のアートを通してポジティブな気持ちを広めていこうと決めたのです。」
と語っています。

地域再生とアートの融合が新たな歴史をつくりだす。

地域再生とアートの融合が新たな歴史をつくりだす。
友人でウォールアートビジネスを営む
Caro MuiさんとRebecca T Linさんは作品に関して、
「南豊紗廠（The Mills）」を訪れた際、
建造物の保存と人気スポットとして
街にうまく調和しているのを感じました。
これは、都会の風景と生い茂った自然の対照的な２つを描くという、
私たちのウォールアートのテーマと重なるものでした。
繊維工場の特に評判が悪かった緑の柱からインスピレーションを得て、
2人のウォールアートの特徴である緑のアートを
廃墟となった工場の中に取り入れました。
それは、感傷的な感情を呼び起こし、
この建物の歴史を強調しています。」
と説明しています。

このアート作品の反響についてRebeccaさんは、
「正直なところ、この作品の人気の高さに驚いています。
このウォールアートがこんなにも多くの
Tinder（マッチングアプリ）のプロフィール写真の
背景になるとは思ってもいませんでした。
作品が評価されるのはとても嬉しいことですし、
使用したフィルターによって作品の印象が変わるのも面白いですね。」
と語っています。

都市の建築物と地域社会との関係を描くウォールアート

ルイ・ヴィトン、Pret A Manger、ザ・リッツ・カールトンなどから
依頼を受けた実績もあるSzabotageさん。
東洋と西洋のインスピレーションを融合させ、
香港ならではのストリートアートを制作しています。
彼の作品は、鮮やかな色彩と文化的な表現が融合していることが人気の理由の1つですが、
都市の建築物とその地域社会との関係を模索していることでも知られています。

彼は「ロブスター・ベイ」と呼ばれる地域にある自宅の壁に大きなロブスターを描きました。
このウォールアートは、地域の人々から大きな反響を得ました。
彼は、依頼を受けて村に2つ目の大きなウォールアートを描くことになりました。
そして、パンサーをモチーフにした“Village Cat”と呼ばれるウォールアートが誕生しました。

「ウォールアートを描いている間、
多くの人たちが足を止めて話しかけてくれました。
路上でアートを制作していると、多くの人と交流できるだけではなく、
自分の作品に対する反応をその場で得ることができます。
思い出深いできごととして、
話しかけてくれた1人の女の子が、
私のために絵を描いてきてくれたことがありました。
彼女が私からインスピレーションを感じてくれたことをとても嬉しく思いました。」

西九龍エリア油麻地（ヤウマテイ）にある
新填地街（リクラメーション・ストリート）。
その角を曲がり、小さな商店や食料品店がひしめく中にたたずむのは
小道具製作スタジオ「偉訊廣告工程（Vision Signage Production）」。
そのシャッターには、お店にちなんだアートが描かれています。
お店の地味な外観とは裏腹に、
オーナーの冼（Sin）氏の常連客には
国内外の多くの映画スタジオが名を連ねており、
香港で製作された映画の90％以上に彼の映画用小道具が使われているそうです。
北へ進むと、新填地街と上海街（シャンハイ・ストリート）に沿って、
さらにいくつかのシャッターアートが点在しています。

油麻地果欄（ヤウマテイ・フルーツ・マーケット）と
窩打老道（ウォータールー・ロード）沿いの賑やかな露店。
ここには、擬人化されたリンゴ、オレンジ、パイナップルから、
麻雀をする地元の人々の光景まで、
活気あるマーケットを再現した
シャッターアートが描かれています。
これらのアートを観るには、
早朝の競りが終わったあと、一般買い物客が来る前の、
シャッターが下りている時間帯に行く必要があるので要注意！
なお、Ferry Street（フェリー・ストリート）の角を曲がると、
マーケットの様子を描いた長いモザイク壁画があります。
こちらも一見の価値あり。

上海街（シャンハイ・ストリート）には、
2017年にイタリア人アーティストのPixel Pancho氏が制作した
シュールレアリズムの壁画作品があります。
環境問題を扱ったこの壁画には、
ロボット風のキャラクターが花と自転車と共に描かれています。
この絵と一緒に、中国の古典的な詩で
地球を大切にするように呼びかける連句も書かれています。
壮大なアートをぜひご覧ください。